避難所に持ち込んだ備蓄は取り上げられるのか(持ち出し袋を背負って備蓄品を抱えた女性のイラスト)

避難所に持ち込んだ備蓄は取り上げられるのか

災害が起きて避難所に向かうとき、頭をよぎるのが「持って行った備蓄は自分のものとして使えるのか」という不安です。実際に、この疑問は形を変えながら、2011年から2025年まで繰り返し投稿されています。

内閣府の避難所運営ガイドラインや取組指針、災害対策基本法をたしかめた範囲では、避難所に持ち込んだ備蓄を回収してみんなに配り直すという決まりは見当たりませんでした。避難所の食料や物資は、市町村や協定を結んだ事業者が供給計画にもとづいて届けるものであり、個人の持ち物を対象にした仕組みではないのです。むしろ法律には逆のことが書かれていて、避難所にいる人にも、やむを得ず自宅にとどまる人にも、食料や衣料などの生活に必要な物資を配るよう努めることになっています。まずは、避難所も在宅避難も同じように支援の対象になっていることを知り、携帯トイレを1人1日5回、3日分から備えることを家族で決めましょう。

避難所と備蓄で確認すること

避難所に向かうときも、自宅にとどまるときも、確認しておきたいことは3つです。

  • 持ち込んだ備蓄を回収して配り直す決まりがあるかどうか
  • 在宅避難でも避難所から支援を受けられるかどうか
  • 在宅避難のために自宅に何を備えておくか

一つずつ確認していきましょう。

避難所に持ち込んだ備蓄は取り上げられるのか

避難所に持って行った水や食料が配られてしまうのではないか、という声は少なくありません。こんな質問が投稿されています。

備蓄を持参すると、みんなに分けられる?

2024年1月に、Yahoo!知恵袋に投稿された質問です。

「避難所に自分で備蓄したものを持参すると、一旦取られてしまって、みんなに分けられてしまうって本当ですか?」
投稿日:2024/1/21
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11292149421

内閣府の避難所運営ガイドラインにも、避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針にも、持ち込んだ備蓄を回収して配り直すという記述は見当たりませんでした。書いてあるのは、指定避難所の食事提供や支援物資について「当該避難所のみならず、指定避難所以外の避難所を含め地域全体のために行われていることを周知徹底すること」という一文です。これは避難所どうしの偏りをなくす話であり、個人の持ち物の話ではありません。

ただし、避難所を実際に運営するのは市町村や避難所運営委員会です。国の資料に書かれていないことでも、地域ごとの運営ルールは異なります。心配なときは、お住まいの自治体の避難所運営マニュアルを確かめておくと確実です。

在宅避難でも避難所からの支援は受けられるのか

自宅に大きな被害がなければ、避難所に行かず、自宅で避難生活を続けるという選び方もあります。その場合、自分の備蓄が尽きたらどうなるのか、という質問もYahoo!知恵袋に投稿されています。

「災害では避難所に行かず、自宅避難を考えていますが、家の備蓄がなくなったら、避難所にいただきに行ってもよいものなのでしょうか?」
投稿日:2025/6/11
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11316169786

内閣府の取組指針の「在宅避難」の項には「避難所の運営に当たり、避難所で生活する避難者だけでなく、個々の事情によりその地域において在宅にて避難生活を送ることを余儀なくされた者等も、支援の対象とすることが適切であること」とあります。そのうえで、避難所の運営担当者は「在宅避難者が必要な物資を受け取りに来る場所となること」など、地域の支援拠点になることが望ましいとしています。だから、備蓄が尽きたときに避難所へ物資を受け取りに行くこと自体は、公的な資料でも想定されている行動です。

食品の給与についても、内閣府の資料に「避難所ではなく、自宅において避難生活をしている方が避難所に炊き出し等の給与を受け取りに来た場合も対象となる」と書かれています。実施するのは、災害救助法に基づく救助の実施主体である都道府県、または救助実施市です。

阪神・淡路大震災では、被害が大きかった地域の約6割が在宅避難生活を送り、避難所生活者が最も多い時期にはその2倍強の人が食事を求めて避難所を訪れています。在宅避難だからといって、支援の対象から外れるわけではありません。

内閣府の避難所運営ガイドラインには、女性用品や乳幼児用品など、女性や妊産婦・乳幼児・子育て家庭のニーズを踏まえた物資を確保することが、避難所の運営側の項目として挙げられています。子供のいる家庭では、こうした物資も避難所の備えの範囲に入っていることを知っておくと心強いです。

セコムが2026年7月に、楽天インサイトを通じて500人に調査を行いました。在宅避難を希望する人は全体の64.8%です。60代では79%、30代でも50%台にのぼっています。物資がいつ届くかは、災害の規模や避難所の状況によって変わります。自宅の備えを厚くしておくことが安心につながります。

避難所と物資について、公的な資料に書いてあること

項目 内容 出典
避難所にいる人への物資配布 市町村などは生活に必要な物資を配る努力義務がある 災害対策基本法 第86条の6
自宅にとどまる人への配慮 避難所に入れない人にも同じ物資配布に努める義務がある 災害対策基本法 第86条の7
炊き出し等・食品の給与の対象者 避難所にいる人だけでなく在宅の人も対象になる 内閣府 災害救助法の実務資料
避難所の役割 在宅避難者が物資を受け取りに来る場所としての機能を持つ 内閣府 避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針
携帯トイレの目安 平均の使用回数は1人1日5回。備蓄はまず3日分を目標 内閣府 避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン

出典:各行に記載(URL は末尾に1行1本)。

これらを合わせて読むと、避難所も在宅避難も、公的な支援という点では同じ立場にあることが分かります。持ち込んだ備蓄を心配するよりも、自宅の備えを厚くしておくほうが、実際の暮らしには効いてきます。

在宅避難に備えて、家族で決めておくこと

避難所に行くか、自宅にとどまるかは、住まいの被害や家族の事情によって変わります。どちらを選んでも支援の対象になっていることを知ったうえで、在宅避難を続けるなら水とトイレを何日分そろえておくか、家族で話し合っておくと心強いです。避難所に向かう荷物の中身は、持ち出し袋を準備しようを参考にしてください。停電が長引いたときの冷蔵庫の判断は、停電したら、冷蔵庫の中身は何時間もつのかにまとめてあります。

令和8年熊本地震(2026年7月28日発生)では、断水が最大108,100戸にのぼりました。8月15日時点でも、約27,400戸で断水が続いていました。停電は最大48,530戸でしたが、3日後にはほぼ復旧しています。断水が長引くと、トイレの水も流せなくなります。

内閣府のトイレのガイドラインには、避難所の計画をつくるときの目安として、トイレの平均的な使用回数は1日5回と書かれています。この目安をもとにすると、必要な枚数は「家族の人数×1日5回×備える日数」で考えることができます。備える日数は、同じガイドラインが避難所の備蓄の目標として、まずは3日分を挙げています。夫婦2人なら2人×5回×3日=30回、4人家族なら4人×5回×3日=60回になります。在宅避難を選ぶなら、非常用トイレ マイレット 100回分のような携帯トイレを人数分そろえておくと安心です。飲み水の確保には、防災用浄水器 SESERAという選び方もあります。


更新日:2026-09-06

著者:日本防災士機構認定 防災士(上地)

運営:シーノン株式会社

この記事の根拠

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